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「大切な仲間ですね」
いいなあ。私にはそんな仲間はいない。服部先輩は小さく、でも確信を込めて頷いた。
「一つでも勝ち抜いていきたい」
この夏を終わらせたくない。
そんな気持ちが伝わってきた。きっと、他の三年生も同じ。そして私たち後輩も。
「おいおい、服部。ずりいぞ、お前だけみのりんと話してんじゃねーよ」
竹村先輩が笑いながらやってきて、私の右隣に座った。
「みのりん、食べてるか?」
白い歯が暗くなってきた景色の中で明るく見える。それほど彼らは日焼けしていた。
高校三年生。
その響きが妙に感慨深く、私は急に涙が込み上げてきた。
「ど、どうした?」
竹村先輩が慌てたので、私も慌ててサッと目元を拭った。
「頑張ります」
「えっ?」
私の決意に、竹村先輩と服部先輩が顔を見合わせた。
「食い終わったら花火するぞー」
間に割って入るように西郷西木先輩の声がした。「はえーよ」とヤンキー千葉先輩が彼の尻に蹴りを入れている。平原先輩と橘先輩はようやく自分たちの分にありついていた。
監督とキャプテンは遠くの石段に腰掛けて何やら真剣に話している。
波が寄せては引いていく。その規則的な音の中に笑い声が響いて、私はこのひと時を忘れないようにしようと空を仰いだ。
一番星が薄暗い空の中で輝いていた。
花火を終え、後片付けも終え。全員それぞれの家に帰った。明日は朝学校に集合して、またバスで球場に向かう。
私は脱衣所で砂まみれになった自分を見た。
「……見せられないよね、こんなの」
呟いて、首元のファスナーを下ろした。
青地に白い花柄の水着。マネキンが来ていたかのようなキワッキワに際どいものではないが、ビキニと言われる類のものだ。
モブ子である自分がまるでモテ子みたいに、こんな水着が着れるだろうか。否。無理だ。痛い女になってしまう。
しかも下のこれ、紐パンだよ。柏田先輩に投げられて解けたら大変なことになるところだった。
でも記念に一枚。
鏡に映った自分を、パシャリと一枚スマホで撮った。多分、この水着とはこれでおさらば。
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