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「勝つぞ」
庄島高校野球部ーーー!
勝つぞ!
オオシッ!
ベンチ前で円陣を組んだ十人と監督。その間に私も入れられていた。叫ばれた決意が鼓膜を突き抜けて、私の中身を全部揺るがすかのように響いた。
そして先頭バッターの平原先輩がヘルメットをかぶり、バッターボックスに歩いていく。
今日も観客が入れる内野席は満員だ。そのほぼ全てが優勝候補の相手チームの応援団。甲子園でもベスト8に入ったことのある強豪校だ。前評判ではやはり相手に分が多かった。
今日のオーダーは次の通り。
一番、ライト、マイペース平原先輩。
二番、セカンド、ヤマネコ兄。
三番、ファースト、キャプテン菅野先輩。
四番、センター、天然柏田先輩。
五番、サード、燃える男竹村先輩。
六番、キャッチャー、西郷西木先輩。
七番、ショートヤマネコ弟。
八番、レフト、忍者ハットリ先輩。
九番、ヤンピチ、千葉先輩。
控えピッチャーは焼肉の鬼、橘先輩。
特に上位打線五人で点を稼いでいく作戦だ。
プレイボール!
今日は昨日の強い風に運ばれてきた厚い雲が上空を覆っていた。監督の言う通り、高く上がったフライの捕球に気をつけたいところだ。捕るの私じゃないけど。
泣き出す前の天気は蒸し暑く、どのタイミングで凍りタオルを出すか考えどころだ。
「今日はよく打つバッターが多いからな。よく作戦を練りながらやってくぞ」
監督は西木先輩と千葉先輩に低い声で言った。緊張感が伝わってきて、息が飲めない。振り返った千葉先輩が私を見て噴き出した。
「そんなにキンチョーすんな」
大きな手で私のポンと頭を叩いた。一瞬胸がドキンと跳ねてしまった。二人は投球練習のためベンチ前に出ていく。
……ハッ、うっかりしてた! 今のもネタに使える!
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