「勝つぞ」

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初回は三者凡退に終わり、千葉先輩がマウンドに向かう。 今日の目つきの悪さも絶好調だ。 ポンポン、とロージンバックを手の表裏で弾き、ジロリと相手を睨む。 「気合入ってるな、チバ」 焼肉では右に出る者を許さない橘先輩が、期待を声ににじませた。 ストライク、バッターアウッ! 今日の審判もキレた声の持ち主だった。カウントの早いうちに打ち損じ、相手も3人でスリーアウトになった。引き上げてきながら千葉先輩に追いついてきた外野の3人。肩を叩きながら「ナイスピッチ」と称えている。 試合が動いたのはその直後。 キィン! 四番、柏田先輩の打ったボールは、あっという間にセンターの頭を越えていった。 いきなりのホームランに、ベンチは立ち上がって口を開けた。応援席はすぐに歓声に包まれ、ブラスバンドの音は力強く鳴り響いた。 ベンチに一列になった選手たちとハイタッチしていく柏田先輩。 「っしゃ! いいぞ柏田!」 「千葉っちにプレゼント」 二人のハイタッチが力強く、私だったら腕が折れそうなほどのパワーで叩き合った。 その3人後に、私にも両手の平を向けてくれた。パチンと優しく手を合わせると、柏田先輩はその大きな手で私の手をギュッと握った。 この度も逆光。でも私を見つめる茶色味を帯びた目が明るく輝いており、目が離せなかった。握られた手が熱い。 「……っ」 声が出ない。伝わってきた熱量に圧倒されてしまった。 「っし!」 柏田先輩は私の手を離し、監督ともの凄い音を出してハイタッチしてベンチに戻ってきた。 「…………」 うわあ、恥ずかしい。3秒!? は確実に見つめられた。うわあ、恋に落ちそう! 多分真っ赤になってしまった顔を両手の平で押さえながら座った。 なんだか意味深な気がして、脱水症状になるかと思うくらい汗が出てしまった。刺激が強い! 落ち着いて、意識してるのは私だけだから! 続く竹村先輩はガッツのフォアボールで出塁したが、ダブルプレーと三振で交代になった。 c2eddaaa-ac57-4f12-b794-3aa3838193f8 イラストは綾瀬シキ様♡ありがとうございます😊
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