私がマネージャーですか！?

「勝つぞ」

次の回は出塁を許したけれど、三塁ベースを踏ませずに五人で終了。調子が良さそうな様子にこちらまで嬉しくなる。

千葉先輩の持ち玉は150キロを超えるストレート。そして同じフォームから繰り出されるスライダーとナックルカーブ、そしてチェンジアップだ。一見ストレートの力技だけで捻じ伏せるタイプに見えるが、意外と器用だ。元は外野手で肩が強い。
監督は千葉先輩の器用さと肩を見て、彼をピッチャーに抜擢したそうだ。

バッテリーの二人は普段ストレートとスライダーを中心にピッチングを組み立てる。しかし強豪校にも勝てるように他の球種を磨いてきたのだ。元ピッチャーで活躍していた監督の直伝の変化球。今大会、監督命令でまだ披露していない。

三回表、忍者が四球を選び、ヤンキーが送り、マイペースがヒットでノーアウト1-3塁という究極のチャンスを、後続の二人の三振でアウトに。

気持ちを切り替えてグラウンドに散ったナインたち。

そう、みんな気を抜いていたわけではない。これはもう、アンラッキーだったのだ。

パキン！

ボテボテのゴロ。しかしショートの手前でバウンドしたボールは変な方向に弾いて後戻りし、慌てて千葉先輩が掴んで投げるも一塁はセーフ。
続く二人はフライと三振に仕留めた。

ふうー、と深く息をついて振りかぶる。フルカウントから投げたのはスライダーだった。

それが。

肘を伝って流れた汗が指先のボールを滑らせた。

完全に抜けたボール。
しまったーー。時が止まるかのような緊張感の後。

快音が球場に響く。

素人のキャッチボールのようなのんびりとした球が、簡単に打ち返された。落ちたのはセンターとライトの間。一塁にいたランナーは三塁へ。
キャッチャー西郷西木先輩がマウンドに駆け寄る。最初のピンチ。私が監督を見上げると、彼は腕を組んでバッテリーを見つめていた。
「か、監督」
「二人に任せておくか。今は」
視線に気づいた監督。こちらを見ることなく私の考えが分かったようだ。

バッテリーは言葉を交わして確認し合う。西木先輩がホームベースに戻っていった。
迎えたピンチに私は呼吸が苦しくなってしまった。どうせビビリです。主役の舞台に立ったことのないモブの私には足の竦むような状況だ。立っているだけでもすごい。