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目が覚めた後のビックリ作戦
目が覚めると、真っ白な天井があった。
「…………」
メガネがないので何も見えない。枕元を探っても指先にメガネらしきものは当たらない。漫画で描くと数字の3みたいな目で、仰向けのままゆっくり周りを見回す。
「あ、気がついたか」
聞き慣れた監督の声に、トロンとしたままの意識で右側を見た。確か、ここは医務室だ。誰も他にはいないのか、静かだった。
「監督、試合は……?」
私の言葉に、フッと相手は噴き出した。
起きれるか尋ねられたので体をゆっくり起こすと、監督も背中に手を添えて手伝ってくれた。話によると私が倒れた時にメガネが割れてしまったそうだ。
「試合は、勝ったよ」
「!」
穏やかな監督の声。「おばさんたちの縄は、切ったよ」という天空の城のラッパの少年の言葉を聞いたかのような安堵。私は目を見開いたが、やはり見えるのは頭に毛の生えたような埴輪のみ。
「ど、どうやって勝ったんですか?」
「後でスコアブック持って帰って見ていいぞ。今はとにかく帰って休むんだ。送ってくから」
「皆さんはもうお帰りになったんですか?」
時間が知りたいが、腕時計の文字も当然見えない。
「ああ、帰らせた。あいつら、マネージャーのベッドの横にへばりついて離れないから、帰すの大変だったんだぞ? 明日決勝もあるから早く休ませないといけないし」
監督は困ったように笑って、私の足元に靴を寄せてくれた。
マネージャーが倒れた後のあいつらの気迫、見せてやりたかったよ。
風呂の湯に浸かりながら、ぼんやりと今日の試合のことを考えていた。
今日のイケメン仕草とイケメンセリフを書き留めないといけないのに、頭がうまく働かない。
もちろん熱中症だというのもある。
けれど原因は帰りの車の中で監督に言われた明日の作戦だった。
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