目が覚めた後のビックリ作戦

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高校生になる前に作り変えた予備のメガネを掛け、冷房の入った涼しい居間でスコアブックを開いた。 6回には柏田先輩のツーランで2点、次の回には千葉先輩のセンターフライのタッチアップで1点、9回には平原先輩のヒットで打点を上げてその裏は抑えてゲームセット。 そして相手のスコアボードにはきれいにゼロが並んでいる。 球種の記録を見ると、秘密兵器が全て解放されていた。最後の決め球はストレートが多い。千葉先輩の鬼のような顔が目に浮かぶ。 数字で見ると簡単だが、きっとその場にいたら興奮しまくったに違いない。……その場にいたかった。 部内恋愛禁止ということで、誰のアドレスも知らない。けれど、監督だけ緊急な連絡の可能性のために連絡先を交換していた。 つい10分前に監督から届いた画像。すぐに待ち受け画面に設定した。私はまたスマホを手に取ってそれを見つめた。 スコアボードを指差して、得意げに笑う10人の選手たち。思わず噴き出した。 ああっ、なんて可愛い子たちなの! お母さんときめいちゃう! いや、お母さんになってはいけないのだ。なれない。ソファの上で抱えた膝におでこをつけた。 「明日、休みたい……」 体育の授業がある前日のようなことを呟いて、私は溜め息をついた。 心臓がきっともたない。 ーー明日限定で部内恋愛解禁だ! ヒット打ったやつはマネージャーの隣に座ってイチャイチャするのを許す。そしてMVP(監督の独断)獲ったやつはマネージャーの祝福のキスをもらえる ことにしても、いいかなあ。 いや、な? アイツら、マネージャーのことになるとやたらと必死に頑張るんだよなあ。 いい訳ないでしょう、バカなの!? 報道されるわよ、カメラ回ってまーす! だいたい、そんなことで本当にみんながやる気になると思う? ……なるかもしれないと思ってしまう私はモブ子失格である。モテ子気取りなんて恥ずかしい。 あの人たちは女子と触れ合う機会がなかっただけなのよ。彼女作る暇もなく練習してたの! 知らんけど。
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