目が覚めた後のビックリ作戦

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「反対!」 挙手しながら立ち上がったのは橘先輩だった。 「俺にはチャンスがないじゃないですかぁ!」 確かに活躍の場がない彼は半泣き声で抗議した。 「タチバナはいつもみのりんの隣に座ってイチャイチャしてんじゃねーか!」 キャプテンが彼を指差しながら怒った。そうだそうだと怒号の嵐。監督が分厚い手を打ち鳴らす。 「よし、じゃあ橘。今日五回くらいまで投げてみるか? お前もマウンド経験してた方がいいし」 「ウス!」 ええ? そんなノリでいいの? 「はーい、質問。ヒット打ったら、出塁するから隣に座れないんじゃないスか?」 平原先輩、確かに! おおお。どよめく車内。 「ホームラン打てばいいだろうが!」 なぜかキレ気味の監督。いや、そういうことじゃないでしょう。 「満塁でヒット打って、二人同時にホームベースに帰った場合はどうなんですか!?」ーー両側に座れ! 「四球出塁じゃダメですか? ヒット限定ですか?」ーーヒットだ! 「イチャイチャってどこまで許されるんですか!?」ーー良識の範囲内でだ! 「キスってどこにしてもらえるんですかぁ!?」ーー望むところだ! 「MVPの基準はどこにあるんすか!?」ーー俺の基準だ! ハイハイハイハイハイ! 途切れることなく質問の手を上げ続ける部員たち。新しい法案はやはりしっかりと練ることが必要だと感じる。 うるせええ、お前ら! 対応しきれない監督が遂に怒鳴った。球場には間もなく到着する。
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