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マネージャーの苦悩
「ーと、いう訳で、今日からマネージャーとして野球部を支えてくれる、小日向みのりさんです。ヨロシク!」
「しぁーッス!」
野球部全員帽子を取って私に向かって頭を下げる。私も慌てて頭を深く下げた。
「あと、部内恋愛禁止だから! 馴れ馴れしくしないように」
これには少しのブーイング。
いやいやいや、そんなことは万が一にも起こりませんから。モブですから! 心の中でそう叫びながらジャージの裾を握りしめた。
「じゃあ、お前らは柔軟体操してランニングな。小日向さん、仕事一通り教えるから。まずはドリンク作りね」
そう言われて、早速ヤンピチから引き離されてしまった。まあいい。まだ観察の時間はたっぷりある。
「野球部の飲み物って麦茶のイメージがありました」
「そうだね。でも栄養補給とか熱中症対策としては、エネルギードリンクの方が効率いいのよ」
職員用の給湯室に持っていった粉末を溶かして、それを大きなポットに作っていく。
「これ、選手一人ずつ2リットル用のペットボトルに作ったらどうなんでしょう。一人どれほど飲んだか分かりますし、管理しやすくないですかね」
私がボソリと提案すると、監督はこちらを向いて笑顔を輝かせた。
「いいね、それ! 大変だけど大丈夫?」
ハッ! そうだった。それをやるのは私だった!
「善処します……」
ズドンと重い気持ちになった。
「明日は俺のポケットマネーで一人一本買ってやるかチクショー。専用の容器作りだ」
監督のお財布事情にも負担をかけてしまった。
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