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予想外のスカウト
翌日、私はご機嫌で登校した。
主人公が決まったのだ。あのヤンピチ(ヤンキーのピッチャー)の彼について調べたい。
ヒロインはどうしよう。今まで彼氏の途切れなかった女子とか? 犬系のハフハフ元気な子? 猫的なツンデレ? いつもなんか食べてるハムスター女子?
この妄想の段階が結構楽しかったりする。
ホームルームが終わり、一限目の準備をする。歴史の授業ーーそれは私の自由時間。今やっている日本史は、先日投稿した漫画のためにめちゃくちゃ調べた。教科書見なくても全部答えられる。
目の焦点が多少合わないかもしれないが、前を見ながら頭の中で妄想できるフリータイムだ。
「あ、小日向」
教室を後にした担任が頭だけ戻ってきて私を見た。
「昼休み、職員室来てくれ」
「へぇ?」
昼休み!? 貴重な妄想タイムに何の用なの? 明らかに不満な表情になった私に、担任はこともなげに告げた。
「お前に用事がある人がいるらしい」
クラスの目が私に注目する。途端にブワッと汗が出て、シャツが湿った。
ひいいっ、見ないでください! 私はモブ子。陽の当たらないところで妄想食べて生きてるんです! 見られると溶ける!
「詳しいことはその時な。じゃあよろしく」
担任は適当にヨロシクすると授業に行ってしまった。みんなの好奇を煽る言い方だけして行ってしまうなんてひどい。
私はみんなの視線に気づかないふりをして、歴史の教科書を開いて齧りつくように紙面を睨み続けた。
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