それは嘆きと葬送

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それは嘆きと葬送

いつも通りの日常、いつも通りの暮らし。 当たり前に過ごしていた日々がひっくり返る。 そんな事、思いもしなかった。 この日までは··· 私はごく普通のスーパーのパート社員だ。 いつも通りに出勤して、いつも通りに仕事をしていた。 「(このまま行けば定時で帰れそうだな)」 今日はいつもよりほんのちょっとだけど早く帰れるかもしれない。 そんな事を思いながら、今日も仕事を共にした包丁やまな板などの道具を洗う。 「わっ」 不注意で包丁が落ちる。 落ちきる前にと、咄嗟に手を出してしまった。 刹那。 スパッと一直線に走る刃。 慌てて止血の為にタオルをグルグルに巻く。 責任者に報告して病院に行かなくては··· あれ······? 「···なんで、タオルに血が染みてこないの?···」 あれだけ広く切れていれば、もうタオルは赤く染まってしまっていてもおかしくない。 その事が恐ろしくなり、そろりそろりとタオルを解く。 傷に近ければ染みているだろうと思ったけれど、一向に赤が見えてこない。 そして、患部が見えた。 「···っ···なに、これ···?」 赤は見えた。 だが、これは··· ·········血ではない。 綺麗に一筋に切れた手の平。 その傷口から覗くのは、赤く紅く光を反射する··· 宝石だ。 もう悲鳴すら出なかった。 ただただ呆然と傷口を眺める私を見つけた同僚が、慌てて病院に連れていってくれた。
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