わっちは”恋”でありんす。

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わっちは”恋”でありんす。

 あそこの角の向こうからずっと聞こえている・・・このパチパチという音。焚火の音でありんすなぁ。古来より妖物の類は焼くに限る・・・と。  そうでありんすか。わっちは焼かれるので。  ああ、来んしたな。あの白装束の方がぬし様のお師匠様で?それに長登屋の男衆も。成程、憑き物はさっさと祓ってしまおう、と。  ああ、そんなに乱暴に運ばないで。  困りんした、困りんした。  ああ、あんなに轟々と焚火が燃えている。あんなところに放り込まれたらわっちは燃え尽きてしまいんす。  待って、待って、待ってっ―――!  止めて、止めて、止めてっ―――!  熱い、熱い、熱い。  燃える、燃える、燃える。  せめてっ。  せめて、せめて・・・教えておくんなまし。―――あの人、あのお人!  あのお人はどうなりんしたかっ?  わっちはあのお人にとどめを刺せたのでありんすか?  彼岸の向こうで、わっちはあのお人に会える――??  ・・・・・あぁ・・・そう。  生きてありんすか。急所はかろうじて外れていた、と。今は神田にある療養所で治療中。  そう、そうでありんすか。  ――――そう。  布が焼ける。  綿が弾ける。  ああ、熱い。  ああ、燃える。
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