白木屋さんの布団でありんす。

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 ――――・・・・・。  お許しなんし。  ()いぬし様に男女のあれやそれやをお話するのは、まだまだ憚られる事でありんした。  ああ、またそんなに顔を真っ赤にして。  そうでありんすな。  万事、つつがなく。・・・とだけ。  お相手様は上機嫌で翌朝帰られ、手練れである筈の散茶さんは、まるで夢見たかのような有様でありんした。件のお相手様はその後も何度も散茶さんをご指名され・・・。  そうしてめでたくも散茶さんの見請けが決まって、日本橋にあります大店の旦那様・・・そのお内儀に納まったのでありんす。  さて、散茶さんが居なくなりんすと、その顛末を羨ましがった多くの娘さんがわっちで仕事をしたがりんした。皆。散茶さんの幸福に少しでもあやかりたかったのでありんすなぁ。  遊郭は、苦界でありんす。華やかに見えても、―――その内側は、ほんに苦しい。  わっちは白木屋さんで幾人かの娘さんの仕事を手伝わして頂きんした。わっちの赤い褥の上で、お相手様を喜ばせ、そうして娘さん達は見請けされていったものでありんす。  不幸は、・・・そうでありんすな。  白木屋さんで雇われていた小男が、見世の娘さんにほれ込んだ挙句、無理心中を図ろうとする事件がありんした。  止めようとした見世の者数人に死傷者を出す大事になり、―――はい、狙われた娘さん本人も儚くなって。  そんな大事件を見世で起こされては、白木屋さんは見世を畳むしかありんせん。白木屋さんで使われていた様々な道具も売り払われ・・・・。  その中には勿論、わっちもおりんした。
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