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その男は、サングラスと、この暑いのにマスクとで顔を隠し、どこからどう見ても怪しかった。顔は厳重に覆っているのに、着ている服はラフな半袖開襟シャツとスラックスでアンバランスだ。そのうえ上背が高いので雑踏のなかでも目立ち、その格好で街を歩いていたら警察官から職務質問されそうだった。年齢は頭の薄さ具合から六十代後半かと思われた。
しかし服装のことをあげつらうなら、テーブルを挟んでその向かい側にすわる中年男も他人のことを言えた義理ではなかった。純白の上下のスーツをしっかりと着こみ、紫のシャツに赤のネクタイ、白のソフト帽を目深にかぶって正対しているのだ。
そんな二人が狭い空間にいっしょにいるのはどこか異様な光景であった。
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