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雑居ビルの三階にある興信所「新・土井エージェント」の面談コーナー。パーテーションで区切られたいくつかのブースのうちのひとつ──。
サングラスとマスクの男は依頼者で、白ずくめは探偵であった。
「お話はたしかに承りました」
白ずくめの探偵──先野光介は開いていたシステム手帳をパタンと閉じ、依頼者の目を見て自信たっぷりに言うのだった。
「お任せください」
「お願いしますよ」
顔を隠してなるべく素性を知られたくないというのがあからさまな依頼者は、先野の服装にどこか信じきれない目を向け、それでも任せてしまうほかはないと覚悟を決め、けれども胸の中に残尿感のようなどこかすっきりしない気持ちを解消できないまま帰っていった。
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