処女転生

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処女転生

 暖かなお布団、美味しい食事、優しい家族。心配なことなんて何もなくて、世界は眩しくって温かい。 「コトリ……」  お母さんの声だ……。 「コトリ、起きてよ」  なんで、そんなに泣きそうな声で私を呼ぶの? 「コトリ、学校に遅れちゃうんだよ」  泣かないでよ、お母さん。いま、起きるから……。あれ? 私……。私、確かホームに落ちて……。 「ハッ!! ハァハァハァ!!」  私は胸を掴んで呼吸をなんとか落ち着けようとする。だが、冷や汗が引かない。恐怖に歪んだ顔が戻らない。  あれは。あれは……私の前世だ。  私は死ぬ年の春、華の女子高生になった。横浜の実家から電車に乗って1時間。それが毎朝の通学ルートだ。電車は異常なほど混雑していて、背の小さい私は容易に隠されてしまう。おかしなことが始まったのは、通学を始めて3日目からだった。最初は、手が軽く触れても密度の濃い電車だからそういうこともあるだろう、と思っていた。だから、何も言わなかった。次は胸だった。真正面からぶつかった拍子に揉みっと掴まれた。動揺に「あっ」と声が出た。その自分の声の予想外の甘さに、私は自分でもゾッとしてしまった。地獄の日々はその後からだった。揉みっと事故で触れたかのような手は「完全な悪意の手」に変わっていた。私は朝、電車に乗る度に胸を揉まれ続けるようになった。お尻を触られるようになった。スカートをめくられ、手は下着にまで及び、やがて下着の中までも犯されてしまった。 誰かも知らない野太い指は執拗に私の性器を追いかけ、撫で回し、指を入れてきた……。 「ゲボゲボ」  前世での記憶からの嫌悪で、私は吐瀉していた。  そのベッドはおよそ、前世では縁のない天蓋付きの豪奢なベッドで、総額は検討もつかない。  私はあの痴漢行為から逃れられなかった。何度も車両を変え、時間を変え、手で払い除けても痴漢は追ってきた。スカートの長さを変えるとか、スパッツを履くとか、長かった髪を切っても無駄だった。  誰かに相談できればよかった。でも、学校は始まったばかりでまだ仲のいい友達はいなかった。優しい両親には絶対に相談できないと思い詰めていた。  私は痴漢の恐怖と戦いながら、その日もホームで電車を待っていた。  学校なんて行きたくなかった。でも、私の高校合格を喜んだ両親にそんなこと言えるわけがない。  震える足で電車に乗った。その日が私の命日になった。私は知らないうちに痴漢に囲い込まれていた。その日、痴漢は1人ではなかったのだ。私は、体をしっかりと押さえつけられ、シャツを脱がされ、ブラを外され、スカートを落とされ、ショーツを破られた。  口を押えられ、声も出せずに半裸にされて、生で胸を揉まれ、舐められ、性器に指を入れられ、口の中で男性器を擦られ、股にも男性器を挟まされた。  そのまま、電車は25分、私の側の扉を開けずに走り続けた。恐怖と嫌悪でその25分は何倍にも長い時間に思われた。だが、やがて終わりの時はやってくる。時間になると示し合わせたように男たちは私に服を着せ、それから突き飛ばすようにして電車から下ろした。痴漢を乗せたまま電車は発信していった。解放されたはずなのに、気持ち悪さはいつまでも消えずに私を追ってきた。男たちが私にしなかったのは、性器の挿入くらいだった。  私は、そのままふらふらと向かいのホームに向って歩いていき、電車に引かれて死んでしまっだ。  すべてを思い出せば、吐き気だけでなく、胸に焼かれるような痛みがあることに気が付いた。 「い、痛い。痛い」  なにこれ。 「サクラ様、朝のモーニングティーをお持ちしました」 「エミリー、助けて……」  私はメイドのエミリーの声にすがった。 「サクラ様!」  エミリーは慌てて飛んでくる。私が吐瀉しているのを見て、具合が悪いと思ったようだ。 「大丈夫ですか」  そう言って、背を撫でた手が止まった。 「奴隷紋……」  エミリーの声は嫌悪に満ちていた。
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