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前日の夜、お父さんは家族だけでちょっとした団欒をしたあと、黄色い部屋でお母さんと夫婦水入らず、思い出話に花を咲かせ、ふっかふかのベッドで抱き合って眠った。 神様がいるのなら、今日、この日、お父さんのために世界中の空の雲を吹き消してくれたのだろう。 朝は今まで見たこともないほど美しく、輝いていた。 お父さんは、あと数分で生命を全うする。 市民センターに親戚一同、ゾロゾロと入室する。 白を基調とした奥の大広間に、たくさんの花、整えられたテーブルセット、無数の燭台にともされたキャンドルライトが並べられている。 家族は先に準備をし、参列者をお迎えする。 白いころもに身を包んだお父さんは立派なポッチャり体型になり、とても堂々とした立ち姿で皆を迎え入れる。 優しい音楽が流れ始める。 「兄さん、義姉さん、子供たち。この度は素晴らしい葬儀に感謝します。おめでとう」 親戚代表のお父さんの弟は先頭にたち弔辞を述べる。 一同に頭を下げ、お父さんは祭壇に上がる。 安い葬儀だとここで、黒く、使い回された分厚い鉄板の上で香草と共に寝かされる。 今回特別仕様のため、神々しく光る重厚な大理石の寝台が用意された。 皆が見守る中、お父さんはそっと座り、緊張気味に体をゆっくり大理石に委ねてゆく。
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