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一同はゴクリと固唾を飲む。 視線がお父さんに釘付けになる。 実はこの、初めての高級帰食葬を一族は楽しみで仕方なかった。 前日は興奮でなかなか眠れなかった者もいたくらいだ。 シェフがピカピカに磨かれ、鋭く輝く大きな肉切り包丁を取り出した。アルコールを吹きかけお父さんの首に刃をはわせる。 シェフはグンっと、刃に体重をのせ、一気に頭部を切り離した。 ドバっと大量の血が下の桶に流れてゆく。 おだやかに眠っているようなお父さんの顔が首から離れ、さあっと、血の気が引いてゆく。 見ていた遺族たちの血の気も引いた。 「うわーーーーん!」 一同は、どよめいた。肝を握りつぶされるような感覚に襲われた。 心臓がはりさけんばかりに鼓動した。 泣き叫んだのは親戚の小さな子供だった。 そんな反応は無視して、シェフは血抜きをしている間、テキパキと胴体の皮を、恐ろしく華麗な手つきで剥いでゆく。 止まらないどよめき。お母さんや家族が目を逸らし咽び泣いている。 泣き叫ぶ子供が増えていく。まさにカオスだった。 本来、バーベキュースタイルでは火葬を待つ間、待合室までいい香りが届いて誰しもヨダレが止まらなくなるほどの食欲をそそる。 見えないところで料理と化したものに対して欲望をそそられていたのに今回の帰食葬では、食欲なんて微塵も感じられない。ただただ生々しいだけだった。 「愛を証明したくて至高の葬儀をしたかったのに、愛するものが切り刻まれてゆくのを目の当たりにするなんて!どうしたら、これを食べろというの。こんな惨いことないわ!」 お母さんは1番上のお兄ちゃんに支えられながら嗚咽を漏らし続けた。
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