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⑥
「鉄板焼スタイルで逝くのは夢のまた夢」
と言うように、一般的な家庭ではまずこのスタイルでの葬儀は見ることは無い。
昔から有名な権力者の中では人気があると言う認識しかない。
親戚一同仰天のあまり、お母さんを止めたり説得したりした。
それでもお母さんの意思は固く、周りは期待と不安に焦らされながら、当日を待つことになった。
残り1週間をきり、お父さんはそれなりにぽっちゃり太った。
前日に自分の料理法が知らされる。
贅沢はしないお父さんは、バーベキュースタイルだとほぼ確信していた。
バーベキューになることはきちんとした家庭である証拠であった。
さらに下だと、乱雑で安値のミンチ葬になる。それはないな、との確信もあった。
さぁ、あともうひと仕事だ。と重い体を起こし、クッキングクリニックに向かった。
1ヶ月ほど前から、このクリニックに通っている。
全身のコリをほぐし、贅肉を丹念にオイルマッサージしてもらうクリニックだ。
施術中、ふと、隣の個室から話し声が漏れてきた。
「わたしはね、明日が葬式なんだ。
あぁ、やっぱりバーベキュースタイルさ。妥当って感じで何も感じなかったね。まぁ贅沢は言えないよな」
「大往生よ!当たり前だけど、家族に誠意があって良かったわよ。感謝するべきよ」
「ところで、聞いた話なんだけど…」
ふと、耳をすませてしまった。
思いがけないその内容から、お父さんとマッサージ師は手を止めて顔を合わせた。
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