かけがえのない妹

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結香は入院してその後も精密検査を行ったが、右足は担当医師の想定より悪い状況だったらしく、とうとう決断を迫られることになった。 父、母、私が結香の見舞いで病室に居るときに、担当医師が病室に来て、足の状態について詳しい説明をしてくれた。 「脛骨の骨折部の端は鋭利な刃物のようになっていて、容易に皮膚を突き破り、骨折部と外部とがつながった状態です。  このように骨折部付近に切り傷や裂け傷があり、骨折部と外部とがつながった骨折を開放骨折と呼びます。  開放骨折は化膿して感染する危険性があり、ひとたび骨が感染すると治療が非常に困難となります。  このため、右足を切断したほうが良いと判断しています。」 父は担当医師に質問した。 「右足を残したまま治療するのは、難しいのでしょうか?」 すると担当医師は、少し悩みながら答えてくれた。 「右足を残したままの治療は困難で、相当な時間を要すると思います。  また化膿して感染すると、体に思わぬ悪影響が出ます。  右足の切断は、とても辛いことだと思いますが、まずは命の危険を回避することを優先に考えた方が良いと思います。」 父は少し沈黙して考えているようだった。 「おとうさん!」 母が父に声をかけると父は決断したようで、担当医師に話しをした。 「娘の命を危険にさらすようなことをしたくありません。  先生、右足を切断してください。」 父が深々と頭を下げて担当医師にお願いすると、母は涙を流しているようだった。 「わかりました。  詳しい手術の方法、日程等は、少し検討してからご報告します。」 担当医師はこう告げて、病室を出て行った。 私が恐る恐る結香の顔を見ると、結香は茫然としているようだった。 私は結香に何と言って謝ったらいいのか、わからなくなっていた。
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