序章

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ

序章

はぐれはぐれて 逃れ逃れた地の果てで 皺くちゃになった理想に泪を零し 陽の匂いを思い出そうとするたび 「何が幸福か?」ということが ハラワタの底の底の底へと突き刺さる そしてハラワタが濁りはじめる 安い酒に喉が焼けるように痺れている 八方塞がりに慣れたように 四面楚歌に慣れたように 真実を揉み消される事にも きっと耐性ができてしまうのだろう 神在月の議題にのぼるべき彼女が こんな微笑の消えた街で なぜひとりぼっちで貶められ続け、 ひとりぼっちで闘い続けなければいけないのか? 八百万の神の証を得るにも姑息な根回しが必要だと言うのか? ねぇ、正義はおいくらですか? ねぇ、祖国はおいくらですか? 言い値を払うので どうか寶島まで僕から奪わないで 匕首動脈に突き刺せば人生なんて簡単に終わる だけどやめておけ 愛されたかったら何をやっても許されるのか? 罪を重ねる余力があるなら 何度も何度も欺き続けても信じてくれた 年老いた親に「ありがとう」とでも言ってやれよ 寒い 真夏だと言うのに寒い 寶島の記憶 またひとつ カーテンのスクリーンに影絵の寸劇青春のようにいとおしげに燃え尽きた
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!