夏色タイムリープ

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僕はそれから七軒くらい回り、ドラッグストアに化粧品を配ると、車は空になった。あとは事務所に戻るだけ。 車が空になると、僕の心までからっぽになってしまったように感じた。 ぽろぽろと、なんだこれは涙だ。大粒の涙が頬を伝う。 杏を思い出した。 もういない杏、死んでしまった杏。 きっと寂しくなったんだ。自分が何で泣いたのかはっきり説明できないけど、いろんな感情が混じって 彼女が生きていたら今ごろ、とか あの子は似ているだけで杏じゃないし 杏が死んでからずっと考えなかったことがぐるぐると頭の中を駆け巡った 終わったという報告を社長にするのを忘れていた。 涙を止めて電話しよう。
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