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先に口説いたのはあなたなのに
「先に口説いたのはあなたなのに、突然別れてくれってひどいじゃないの。他に好きな女ができたっていうのなら、話はわかるけど、会社の上司に勧められてお見合いするから別れてくれって何よ。馬鹿にするにもほどがある。」
いつも二人の待ち合わせに使っている小さな喫茶店のいつもの席で、私は彼に怒り狂っていた。店内に他の客はいないが、カウンターの向こうのマスターは脅え切っている。
「・・・・・・・」
私は、黙ったままの彼に、よけい腹が立ってしょうがない。
「何か言ったら、どう。」
「別に。」
「言いたいことがあったら、はっきり言ったらどうなの。言いたいこと言わずに、いつも、笑顔で誰にでも愛想をふりまいて良い人ぶっているそんなあなたが嫌いなの。」
「あっ、そう、だったら、なおさら、別れてくれよ。」
「嫌。絶対、嫌だからね。私、別れないから。」
「そう、勝手にすれば。でも、僕の中では、君との関係は終わっているから。じゃあ、これで。」
私の返事を待たずに、彼はマスターに私の分のコーヒー代も払って、出て行った。
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