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吾輩は猫である。……言ってみたかっただけですが何か?
気がつけば、知らない空が広がる世界だった。
瞳に映るのは、絹のように光る青空と、まばらに浮かぶ綿菓子のような積雲のみ。
言ってしまえば、ごくごく普通の初夏の空だ。
もちろんごくごく普通の空を、彼も知らない訳ではない。
ないのだが……。
彼は何かを確かめるように視線を落とす。
目の前には白い壁。
(家……? いや、店か? )
入口付近には陳列されている商品らしきものがあり、その形状から何らかの店であることが分かる。
隣を見れば大きな箱。
どうやらその店の前にある大きな箱の影で、彼は寝ていたようだ。
周囲には家屋が立ち並び、日常が奏でられていることから、居住区の一角であることがわかる。
改めて自身の姿を見る。
(……うむ、獣だな)
再度周囲を確認するように見渡し、その事実に思わず天を仰いだ。
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