ウチの猫、喋ります。

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「当たり前のように言われても分からないから!  祓ったって、操られていたってこと?」  未だに理解が追いつかない。 「この霧自体に人を操る魔法……いや、魔法とは異なるが、それに似た何かが混ざっている。  我や優馬には無意味であったがな。クックック……」 (笑いながら怖い事を言わないでいただきたいのだけれど……ん?) 「そうするとさっきの女性もこの子も、周りに見えている人達も、霧のせいでおかしくなってはいるけれど、普通の人には変わりがないってこと?」    霧に入ってからのことを思い返す優馬。実を言うと優馬は子供に襲われる前、ソラの偽物に喰われそうになったのだが、その際に突如背後から女性に羽交い締めされていた。なんとか倒れ込み羽交い締めが緩んだすきに抜け出せることが出来たのだが、恐らくその女性も目の前の少年同様操られていたのだろうと結論付ける。 「女性が誰かわからぬが、少なからず目の前の子供は間違いないだろう。だが……」  言葉を止め辺りに目をやるソラ。その視線に嫌な予感を感じて優馬も思わず苦虫を噛み締めた表情になる。何故ならば。 「ふむ、  ちと面倒になるかもしれんな」  周りへと視線を向けるソラに優馬も合わせて視線を向け……。 (――ですよね)  とすぐに優馬はその事に後悔する。実際には気づかなければもっと後悔することになるのであるが……。ぞろぞろと影がうごめいていたのだ。  今まで周りにいた動く事の無かった人影だ。それが優馬達に向け歩みを進めていた。  10……いや、20人はいるだろうか? 今まで見えていた人影以上の人数が優馬達を囲い迫ってくる。  恐らく、霧に操られた人たちはもれなく先ほどの子供のようにグルグルと焦点が合っていないに違いない。 そして、続けざまの嫌な予感。 どうやらこういう時の嫌な予感というものはやたらと当たるらしい。 「因みに面倒っていうのはどういう……?」  優馬は目前の状況に唖然としながらも含みのある言葉に、念の為の確認をしたのだが……。   「カッカッカ、魔力切れだ!というわけだ、いったん逃げるぞ!!」 「ええええええぇぇぇぇぇ、ってわ!?」 その答えに思わず絶叫。嫌な予感は当たってしまうのであった。 更に、ヒョイと身軽に翔るソラに優馬もそのあとを必死で追いかけようとし、こけたのであった。 それはもう、見事にこけたのであった。
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