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「ッ――!?」
ソラの偽物が投げつけられ地面に伏せると、驚いたように目を見開きこちらを睨む。
どうやら、ダメージは受けた様子はないが、自身の技が破られるとは思いもしなかったのだろうか? わなわなと憤慨した様子が見て取れる。
霧に巣食い、絶対の強者として今まで捕らえた獲物を喰らってきたのだろう。
自分のテリトリー内なのだからわからなくもないが、先ほどまでわざと獲物をすぐに捕まえずに遊んでいたはずが、その獲物に噛みつかれて怒っている様だ。
だからと言ってクラネスが気にする事でもなし。霧の中へと手を伸ばすと再び空を掴む。
掴んだものに目を向けると、優馬を羽交締めして来た女が、顔を掴まれてもがいていた。
「ほう……」
クラネスはそのままソラの偽物のもとに投げてやる。
女にディスペルをかけてやろうかと思ったのだが、その必要はなかった様だ。
周りにいるほかの物と比べ、所々黒ずみボロボロの女。
その体はすでにただの器でしか無かった。
そして――
その女の中へ、これ幸いとばかりにソラの偽物が霧となり、溶け込んでいく。
正直女の器に入ったからとはいえ何かが変わるとも思えないのだが、ソラの偽物と同じようにケタケタと笑いだす女。
辺りの霧がそれに呼応するかのようにビリビリと空気を揺らしているように感じる。
いっきに片を付けようとしているのであろうか? 力の流れが女の中で集まり膨らんでいくのが見て取れる。
殺意に酔う恍惚な表情を向け、ぱっくりと女は口を開いた。
刹那――
クラネスに向け女が迫りくる。
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