吾輩は猫である。……言ってみたかっただけですが何か?

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 別に獣の姿を嘆いている訳ではない。  クラネス・カーバイン。クラネスは元々人間だ。  そのため今の獣の姿に驚きはしたが、だからといって戸惑ったり嘆くようなことではなかった。  そんなことよりもクラネスにとって戸惑うほどには驚くべき事実がそこにあったからだ。 (――大気中に魔素がない!?)  目覚めてすぐ、空を見上げ違う世界だと感じた理由だ。  とりあえず自身を落ち着かせるため、数回の深呼吸の後思考を巡らせた。  一旦落ち着いたことにより、状況の理解が追いついてくる。     (そうであったな……)  今の自分が何者で、何処にいるのかも自然と理解できる。  大きな箱……車の影に立つ猫こそが、今の自身の姿。俗に言う『吾輩は猫である』状態だ。  いや別に名前がないわけではない。  朝倉 ソラ(あさくら そら)となんともキュートな名前がある。  そしてそんなキュートな彼は既に1度死んでいる。  それも約千年前に。
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