現実逃避とマイエンジェル

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 その後はいつもの様に母に見送られ、優馬は家を後にした。  夏休みの部活は、夏休みが始まってからの2週間と、終わる前の2週間の計4週間となっている。  今は前半の2週目の月曜日。慣れ始めてきたものの、土日休みを挟んだことにより、若干の慣れも振出しに戻った気分だ。  その後は稽古を終えると水分補給をしながら同じ3年の部活仲間2人と無駄話をしたのだが……。 (今さらながらその時の内容が不味かったんじゃないか?)   幼少からの友である眼鏡君が、脈略もなく降ってきた内容だ。  その内容と言うのは同じクラスの学友が、昨日から家に帰っていないという事だった。  更にもう1人の友である爽やかパーマくんから、  「これは……、事件の匂いがしますね」  等と言った事も悪かったに違いない。今ならその学友が霧に喰われて消えたと言われれば信じるのだから。  そして何より学校を出た後、校門前まで普段迎えに来ることのない愛猫が迎えに来た事を疑問に思うべきだった。  何せ霧に包まれた後、迷い込む羽目になったのは抱えていた愛猫が抱えた手から飛び降り霧の奥へと消えていたったことが原因なのだから。更に愛猫に追いついてみれば、その愛猫に喰われかける始末だ。  いや、愛猫は偽物だったわけなのだが。  もしも今日部活に行かなかったなら、学友が変な話題を振っていなかったのなら。愛猫が、霧が、様々な「もしも」が頭を巡り、再び目の前の幼い子供へと戻る。 (大体10歳もいっていないだろう子供にハサミを突きつけられ襲われるってどんな悪夢なんだよ!)  小さな子供だからと、何の警戒もしていなかったと嘆く優馬。  助けを呼ぼうと周りを見渡すも、子ども以外の人影はその場から動く気配はない。  これだと周りの人影も信用できない。 (どうしようどうしようどうしようどうしよう……) 「もしも」を考えたところで意味もなく、焦りだけが先に立つ。  当たり前だが時が待ってくれるわけもない。吹き飛ばされ倒れ込んだ男の子が立ち上がり再度ハサミを握り迫ってくる。  目の前の10にも満たないであろう幼い子供に恐怖し、 「っ――」  息をのむ。  目前に血しぶきが飛ぶ。血しぶきに思わず目を逸らそうとし――  血しぶきが自分の物ではないことに気付く。 「ふむ……。  自身のペットと見分けられないとは何とも嘆かわしい事か」  迫る子供の腕を噛みちぎり、守るように立ちふさがる愛猫がそこにいた。
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