転生したら猫だった。

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転生したら猫だった。

 クラネス・カーバイン。  彼は魔法が実在し、神や精霊、ドラゴンや魔獣が当たり前な世界『アースヘイム』にある、カーバイン魔王国の魔王だ。  魔王と言っても悪魔や、悪の親玉とかではない。  魔族、魔人と呼ばれる種族はアースヘイムでは、体内に魔核という、魔素を生み出す器官が存在する人種であり、あくまで魔法に秀でた 〝人間〟 だ。  まあ、そのことで人と魔人の間で迫害や戦争などといったことが起こりはしたが、それはまた別の話である。    クラネスは思わずその場に座りクククと喉を鳴らす。  自分の感情を表す様にゆっくりと左右にしっぽを振り、右前脚の肉球を地面にムギュムギュする。  まさか魔王である自分が、猫として転生するとは思いもしなかった。それも魔法のない世界でだ。  目覚めてすぐ。空を見上げて戸惑っていた自分の姿に、思わず喉もなるというもの。 (とは言え、いつまでもこうしていても仕方があるまい。今は『片割れ』をどうすべきかが問題だ)  やれやれとばかりに猫の体で器用に肩をすくめるソラ。    実を言うとクラネスが転生したのはソラ1匹だけではなかった。とある理由から魂を2つに分けソラともう片割れに転生せざるを得なかったのだ。  そのこと自体は仕方が無いこと。  クラネスの『片割れ』が転生後のソラと近しい存在であったことも、そんな偶然もあるのだなと思う程度でしか無かった。  だがその『片割れ』に危機が迫っていたとは思いもしなかった。  記憶の戻る前のソラがその事に気がついており、ソラの記憶とクラネスの記憶が統合したことによりその事実を知ったのだ。    (流石に危機を知ってしまった以上、死なれでもしたら目覚めが悪いか)    ソラは1つ溜息を付くと、魔素を練り上げ、魔力を溜める。そのまま光の波として自身を中心に魔力を放出させることにした。
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