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それは元ボクシングの世界チャンピオンと言う肩書きのせいではない。
私はもう、天賦の才なんてものに焦がれるほどうぶではない、と受付の男は独り言ちた。
川崎は、プロテインや過度なダンベル運動で、筋繊維を断裂させて筋肉が太くなるように作られたボディービルダーとは違う。アスリートとしての実用的な筋肉を持っている。
そしてその川崎の人間性は、彼自身の持つ筋肉やその筋肉で鍛えられた肉体にどこか似ているような気がした。
しかし川崎が他の客に掴みかかったことをオーナーには、なんと報告すればいいのだろう。川崎は本当に、出入り禁止になってしまうのだろうか。受付の男は周りに集まって来る好奇な目をした野次馬に、なんでもないことを告げながら、どうしたものかと頭を悩ませるのだった。
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