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自宅のあるマンションに帰ろうと、川崎はスポーツクラブの前にある大きな通りに出て、タクシーが通るのを待っていた。行きは健康のために走って来たのだが、小さな雨粒が一つ二つ黒いウインドブレーカーに落ちてきて今にもひと雨降りそうだった。
タクシーを待つ間、実日子と結衣がいた家族三人で過ごした日々が思い出され、暖かな陽だまりを回想した。
時計を送るなんて、失われた時間を取り戻したいと思っているようだなと思う。
見えすいたメッセージを二人は笑うだろうか?もしかしたらあざといことをして、と実日子の俺に対する憎しみが深くなるかもしれないと川崎は懸念した。
「まぁ、なるようになるだけだ」
川崎は自分を勇気づけるように、声に出して呟いてみた。
いつか三人でいたあの陽だまりに帰りたい。たまにでいい。ほんの少しでも…。しかし、そんな思いは夢のまた夢なのだろうと、川崎はため息が溢れた。
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