蛇になった男

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結衣が帰って来ないことを、実日子はもどかしく感じていた。こんな雨振りにいったいどこに行っているのだろうか。朝、確か試験前だから早く帰ると言っていたはずだったが。 心配することはないもう高校生だ。友達と本屋やハンバーガーショップにでも寄っているのかもしれない。 だが、実日子はなぜか、結衣がどこにいるのか気になった。結衣の居場所をGPSで確認しようとスマートフォンを開く。GPSの地図には、家とは反対方向に進んでいると思われる結衣の動向が示されていた。 どこに行くつもりだろう。この先には駅前があり確かにいろんな店があるが、学校の近くにも本屋やハンバーガーショップはあった。 結衣がいつもの行動と違うことが気になる。結衣に限ってパパ活なんてことはしていないと思うのだが…。 GPSをしばらく見ていると結衣の行く先には実日子と夫の棚田が通うスポーツクラブがあることに気づいた。棚田は先ほどスポーツクラブに出かけて行ったが、同じ家に住み毎日顔を合わせている棚田と待ち合わせているとは考えにくい。 匡臣さんか…。実日子は今日も、元夫の川崎匡臣にスポーツクラブで追いかけ回された。 匡臣さんは元の家族と仲良くしたいみたいだけど、私は今の家庭の円満を第一に考えているのよ。実日子はそう心の中で呟く。今の実日子にとって川崎の存在は煩わしかった。 もしかしたら、結衣の誕生日が近いから、結衣は匡臣さんと待ち合わせをしているのかもしれない。
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