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カツカツカツ。音を立てながら、数学の男性教師がチョークで黒板にルートの数式を書いていく。教師の濃紺のスーツと水色のストライプのシャツが折り目正しく、線と鋭角だけで出来ているかのように見えた。教師の持つチョークから、白いチョークの破片がいくつも、黒板を滑り落ちる。
教師は黒板に書ききれなくなり、前に書いた数式を消そうと、パンっと黒板消しを黒板に押し付けた。黒板消しの表面に付いていたチョークの粒子が舞い上がる。
教師はむせて咳き込みながら、黒板消しのクリーナーに電源を入れた。クリーナーはブーンという音を立てながら、黒板消しに付着したチョークの粉を吸い取っていく。
その隙に結衣は、黒板に書かれた消されてしまいそうな数式をノートに書き写す。結衣は数学があまり得意ではなかった。なので、ちょっと他のことを考えて、ぼんやりしていたらかなり先に進んでしまったのだ。
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