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そんなことを考えていたら、私はなぜだか急に匡臣さんのことが心配になってきた。父の身に何かあったのではないかと思う。
そうだ、この黒いダイスの空想はもしかすると何かの前兆で、これから何かが起こるのに違いない。そんな予感に私は怖くなった。
両親が離婚して、なかなか匡臣さんと会う機会がなくなった。前回あった時に、冷たく当たってしまったことを私は後悔している。匡臣さんは今、寂しくしていないだろうかと思う。
最近、私は匡臣さんに会うと反抗的になってしまっていた。親というものが煩わしい時期なのかもしれない。しかし、原因はそれだけではなかった。
「結衣、帰ろう!」
友人の紗希(さき)に名前を呼ばれて、我にかえる。紗希とは幼馴染みで、一緒に同じ高校に入ろうと励ましあって、この辺ではちょっと有名な名城高校に一緒に合格したのだった。
気づけば六限目の終了のチャイムが、すでに鳴り終わっていた。最後は走り書きになってしまったが、数式はすべて書き終わった。
私はテニス部に所属しているのだが、試験前で部活は休みで、授業が終われば帰ることができる。今日は担任も他の用事で忙しく、ホームルームもないらしい。
「うん。帰る」
沙希の言葉に答えて、結衣は鞄に教科書やノートを詰め込んだ。
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