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羽田空港は、東屋から見える隣町まで続く小宇宙よりも狭いはずなのに、どこまでも広かった。
行き交う人々は数多けれど、どの顔も見知らぬもので、ただこの世界に一人ぼっち。もうどこに、サラを見つけられないんじゃないかと思えてくる。
襲いかかってくる不安が浸透して足元まで震えだした。
その時、SNSで連絡先を交換したことを今になって思い出した。
スマホだ!、そう思って、カバンの中も、上着のポケットも、スカートのポケットも、もう一度カバンの中も探し尽くして、見つからないことに気がついた。
そういえば、サラのあの部屋で羽田空港までの経路を検索して、慌ててスマホをデスクにおいてきたのだった。
……もうだめだ。サラともう会えない。あのまま、もう会えない……。
涙が溢れて流れ出そうな状況を必死になってこらえた。
カナダ行き、カナダ行きを探そう。
冷えた足元に最後の力を振り絞って動かし、発着便案内モニターの正面にたどり着いた。
涙で目の前が大きく揺れる。カナダ、どこよ、もう……
その時だった。
「……アンナ!」
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