小高い丘の広い世界

14/18
前へ
/18ページ
次へ
 羽田空港は、東屋から見える隣町まで続く小宇宙よりも狭いはずなのに、どこまでも広かった。  行き交う人々は数多けれど、どの顔も見知らぬもので、ただこの世界に一人ぼっち。もうどこに、サラを見つけられないんじゃないかと思えてくる。  襲いかかってくる不安が浸透して足元まで震えだした。  その時、SNSで連絡先を交換したことを今になって思い出した。  スマホだ!、そう思って、カバンの中も、上着のポケットも、スカートのポケットも、もう一度カバンの中も探し尽くして、見つからないことに気がついた。  そういえば、サラのあの部屋で羽田空港までの経路を検索して、慌ててスマホをデスクにおいてきたのだった。  ……もうだめだ。サラともう会えない。あのまま、もう会えない……。  涙が溢れて流れ出そうな状況を必死になってこらえた。  カナダ行き、カナダ行きを探そう。  冷えた足元に最後の力を振り絞って動かし、発着便案内モニターの正面にたどり着いた。  涙で目の前が大きく揺れる。カナダ、どこよ、もう……  その時だった。 「……アンナ!」
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加