タケル

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そして、入学式の日。 ぼくの前の席にすわっていたのは、赤いランドセルの男の子だった。 おかあさんがその子を見て、少しあわててるのがわかった。 それからフォローするみたいに、「やっぱりタケルのランドセル、大人っぽくていいね」と耳打ちしてきた。 確かに茶色いランドセルはぼくひとりだけで、他の男の子は青とか黒とかが多かった。でも、男の子でも赤いランドセルの子、いるじゃん。 なんだかくやしくて、得意げに赤いランドセルをしょってるその子を、ぼくはその日ずっと、見ないようにしてた。 ソータって名前のその子とは、だけどすぐに仲よくなった。 帰る方向も同じで、いっしょに帰ったり、あそんだりした。 「ソータは、なんで赤いランドセルなの」 ある日、帰り道で前を歩くソータに聞いてみた。 「なんだよ、ヒーロー戦隊しらねぇの?」 「え」 「キョウリュウレンジャーだってウチュウレンジャーだって、レッドが真ん中でいちばんカッコいいリーダーなんだよ!」 目をきらきらさせて、ぴょんぴょんしながらソータは語る。 「おれもヒーローになりたいんだ!いちばん強いしカッコいいレッドになりたい!だから赤!」 びっくりした。 ヒーローになりたい。だから赤がいい。そんな理由もあるんだ。 「タケルは?ヒーローになりたくないの?」 「ぼくは…」 ぼくは。ぼくが赤いランドセルがほしかったのは。 「ぼくは……女の子に、なりたい」
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