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こだまるするギャグ
選手名は、ディエゴ・ゴンザレス。
正真正銘のウルグアイ人。
しかし、坊主頭に、目の下のクマ。
長丁場ということもあるのかもしれないが、顔全体がグッタリしている。
2年前のM1グランプリ決勝で観た、トム・ブラウンの合体をする方「みちお」にソックリだ。
みちおが怒っている。俺に猛抗議している。
なんでフィールドに居るんだよ。
そんなことを考えていたら、選手が、さらに詰め寄ってきた。
なんだなんだ、うるさいな。オフサイドはオフサイドだろ、みちお。
ドカンッ!!!
胸に激痛が走る。みちおの坊主頭が、俺の胸に激突した。
ジダンといい、お前といい、なんでハゲの選手ほど、頭突きするんだ。
コンプレックスじゃねーのかよ。
サッカーとは紳士のスポーツだ。
お前も、さっきまでは真剣に戦ってたじゃないか。
どうなっちまったんだよ・・・
ドカンッ!!!!!二発目を食らった。
もはや紳士のスポーツではない。
俺はこのみちおに忠告しないといけない。
一体どうやって・・・
その瞬間、あの言葉が頭によぎった・・・
「いったい、どうなっちゃうんだぁ~?」
俺の頭のリトル布川が、こうささやく。
俺はリトル布川の声に、耳を傾ける。
「このみちおの頭を引っ叩いたら、いったいどうなっちゃんだぁ~??」
いや、ダメだろ?選手だぜ?
しかも、オリンピックの決勝だ。4年に一度の大舞台だ。
でも、好奇心が湧き上がってきた。
オフサイドも、頭突き×2回も、絶対に良くないことだろ。
次の瞬間、
「ダメ~!!!」
俺は、ウルグアイのみちおの頭を引っ叩いていた。
一瞬の静寂。しかし、一瞬だった。
ピピィー!!!
笛を吹かれたのは俺だった。ペナルティーを犯したのは俺だった。
選手たちの信じられないという目。観客の悲鳴と喝采。
俺は頭が真っ白になった。
56年ぶりに行われた東京オリンピックのサッカー決勝戦は、
イングランドが優勝したことよりも、主審が選手の頭を引っ叩いたという話題で持ちきりだった。俺は、日本にも、イングランドにも、本当に申し訳ないことをした。
この大事件の裏に、トム・ブラウンの存在があったことは誰も知らない。
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