04 逃亡

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 県外に出てやっと、周の手を握る力が和らいだ。 「お客さん、随分顔が……その、酷いようですが」  運転手にそう言われたとき、俺は一瞬何のことだか分からなかった。  しかしすぐに周のことだと気づき、周を抱き寄せて顔を隠す。 「これは階段から落ちて……」  いつかの周と同じような言い訳をしている自分に、心底苦々しい気持ちになる。実際に尋ねられると、そんな言い訳しか思いつかない。  余りに下手な嘘だったからか、運転手は納得していない様子で「そうですか」と呟いた。  これだけの怪我を隠すだなんて俺でなくても無理だろう。  俯いて、ただ時間が過ぎるのを待つ。  早く離れたい。安全な場所に隠れたい。  だけど、兄なしで自分が生きていけるのだろうか?  本当にその覚悟があるのか?  兄のもとにもう二度と戻れないかもしれないという実感が、俺にはまだ湧かない。帰る家がないのだということが、どういうことなのか分からない。
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