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02 兄と周
周は本当は何者なんだろう。
布団に入ってからも、そのことばかり考えていた。
ただの兄の友達……ではないだろう。それではあまりに異様すぎる。
だからと言って、別の妥当な答えが思いつくわけではなかった。考えても考えても分からないから、考えてしまうのだ。
疲れていたはずなのに、目は爛々としていた。もう閉じる閉じないの問題ではない。閉じても閉じなくても同じことだ。頭の中で色々なことが回りすぎて眠りが寄ってこない。
――やっぱり気になる。
上体を起こし、布団から這い出る。
扉を開け、電気を点けずに廊下を歩く。キシキシと木が軋む。大丈夫。兄に出くわしたらトイレに行くのだと言えばいい。
開かずの間には、何事もなく辿り着いた。
扉と床の僅かな隙間から光が漏れている。小さく心臓が高鳴った。
周はまだ起きているのだろうか。ここに入ることができたら、と考えて、兄の部屋を確認してこなかったことに気づく。
兄は今どこにいるのだろう。
ふと考えて、怖くなった。
この中にいるんじゃないか? 部屋で寝ているのではなく。
そっと扉に耳をつける。微かに音が聞こえる。
「……ぁ……っあ、うみ……」
……周の声?
しばらく耳をそばだてて、それが喘ぐ声だと理解したとき、かっと頬が熱くなって、思わず扉から耳を離した。
なんだ、今の。
どうしてあんな声を?
さっき兄の名前を呼んでいた。もしかして兄と周は……。
そう考えると、腹の底がざわりと騒ぐ。
これ以上知るのは嫌なのに、もう一度耳を寄せてしまう。
「本当にお前……すぐ……な」
「……んん……っぁ……」
「少しは我慢……のか」
やっぱり、やっぱり。やっぱり。
どうして? なんで? 男同士だろう。いや、それが悪いわけではない。だけど、兄が、昨日会ったばかりの男……周を抱いているだなんて、突然受け入れられない。
それに、周は友達だと言っていたじゃないか。さっき自分でそれを否定していたのに、いざとなるとその言葉に縋りたくなる。
音を立てないように後ずさり、口を押さえる。
それから急いで部屋に戻り、布団に潜った。
――嘘だ、あんなの。
兄と周はそういう関係なのだろうか。枕に顔を押し付け、忘れようとしても忘れられない。周の悩ましげな声が頭に響く。
住むところがないからここに居候しているだなんて、嘘なんだろうか。
周がここにいるのは、兄の恋人だから?
相手が男だから、兄も隠そうとするのだろうか。
そう考えると、友達を隠すよりは多少辻褄は合う。
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