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『赤色』
赤色を作りたい。
漠然とした思いが、小学1年生の時の図工の時間に思って、先生に聞いたら。
「赤色は、何かを混ぜて出来る色じゃないんだ」
今も覚えてる。
先生の困った顔と笑った顔を混ぜた表情でそう言ってくれた光景を。
あの時の僕の顔の表情は、それは残念な顔か絶望的な顔のどちらかはした筈だ。
だって、先生はわざわざ僕と目線を合わせる様にしゃがんでくれた。
「けど、その赤色は、青と黄色があると他の色に変わる。ほら」
先生は、筆を持って、パレットに小さく、色んな色の丸を作った。
先生の作る色は、僕の作る色よりも綺麗で、絵本で見る魔法の色に見えた。
何度も、僕は、先生の横顔とパレットに出来た色んな色の丸を見比べて、最後に笑った気がする。
「この色は、先生達やお前達に出来ない色だけど、それ以外の色も出来るし、赤の色だけでも綺麗だろう?可能性は沢山ある赤だ。」
この言葉を僕は、大人になった今も覚えてる。
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