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桜の花びらがひらひらと舞う四月。
俺達は桜聖学園に入学した。
桜聖学園の象徴である桜の木は、
これから飽きるほど通るであろう通学路に何本もそびえ立っている。
俺の隣で桜の木々を見つめる真司の前髪に花びらが付いていた。
「…おい、付いているぞ。」
俺とは正反対の黒髪にくっついているそれを指摘すると、目を見開き慌てたように言った。
「お見苦しい所を見せてしまい申し訳ありません。」
「…ふん。お前はいつまで経っても変わらないな。間抜けな所が。」
あぁ…まただ。
普通に言えばいいのに、いつも一言余計に言ってしまう。
数ヶ月違いとはいえ、兄として優しく取ってあげることくらいすればいいのにそんなことすらできない。
ますます父の遺伝の力を感じ始め、俺は自分が怖かった。
だって、今の自分の姿が父に似ているから。
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