俺だけでいい。

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リップ音…? わざわざ音を残して俺の瞼にキスを落としたみたいだ。 「…何をしている。」 「いえ、兄さんがずっと目を閉じたままだったので。」 「理由になってないぞ。」 「すみません。」 クスクスと笑いながら前を向いた。 なんなんだ一体、と思いながら俺も前を向く。 真司って、こういう奴だったっけ…? 確かに、こんな俺にも態度を変えずに接してくれる根性のあるやつだ。 だいたいの奴は、すぐに根をあげて自ら離れていくのに。 それなのに真司は、いつも涼しげな表情で俺の後に付いて来た。 さぞかしストレスが溜まってるのでは? あとで胃薬買ってあげよう… 校長の光る頭皮を見ながらそう思った。
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