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「聞いてますか、ひとのはなし」
「どこで買ったの、このシャンプー」
「お母さんがデパートで買って.....、アゴをどけてくださぃ」
葵ちゃんの声は小さくて、ほとんどの言葉が尻つぼみになっていきます。周囲に人がいないときはそうでもないのですが、誰かが近くを横切ったりすると、つい、人目を気にして、そうなってしまいます。
たった今も、柴犬とお婆さんがゆっくりと横切ったので声が小さくなりました。
戸高くんは、そんなこと気にしません。だって、葵ちゃんの頭の乗せ心地はこの上なく、極上なのですから。
うっすら暑さを感じるほどの気温。よく晴れた空。葵ちゃんの髪の香り。校舎から聞こえる吹奏楽部の演奏、チャイムの音、野球部の掛け声。
戸高くんは、この穏やかな一時に、うっとりしてしまいました。
「デパートに売ってるんだ。俺、この匂い好きだな」
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