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クリスマス
クリスマスイブに君をデートへ誘った。一世一代の大勝負のつもりだったが、君の予定は先に埋まっていた。それが本当かどうかはわからないが、断られたことは事実だ。
君のいない世界の物語を慎重に、そっと書き足していく。日常という五線譜の上を頼りない響きで伝っていく。
友達にデートへの誘い方を聞きまくった。何もないのに不安で、話しても解放されない話したい欲求が溜まる。自分が自分でなくなったかのように、好きという感情が溢れ出した。
冷静になった今では考えられないことをしていた。だから、君が好きという感情を教えなかった世界で、ぼくは生きているのだと錯覚していたい。
そんなどうしようもない気持ちを捨てられるはずもなく、ただ部屋の隅に置いた。色褪せるその日まで、ぼくはリアルを放棄する。君がいないのなら、失くす意味だってなくなるのだ。
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