0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
七夕
『空(くう)と両想いになれますように。』
短冊に書いたは良いものの、それを飾ることはできなかった。書いたという事実だけで自分を満足させ、力強く消した。
彼女の書いた短冊を見た。両想いになるというぼくの願いが叶えば、彼女の願いは消える。
『好きな人の願いが叶いますように。』
ありきたりな願いだと笑われたっていい。自己犠牲、偽善者扱いもなんてことない。ぼくと君は天の川を越えても出会えない。一年かけて一センチも近づけない。連絡先を交換しているとはいえ、七年も経てばぼくたちの糸は廃れているに決まっている。
さようならすらも言えずに明日を迎え、おはようも言えずに時は過ぎる。歩く道は、輝く星々は、全てフィクションだ。
最初のコメントを投稿しよう!