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燃え盛る街
街に爆炎が上がる少し前、クレイグは伝令から撤退の命令を聞いた。
「なぜだ?」
「分かりません。上からの命令です。兵は全て引き上げよ、との事です」
「馬鹿な。まだ凶悪な人殺しが街をうろついているのだぞ!!」
先程、チンピラの死体が見つかった。
首をへし折られた死体だ。
彼の頬には殴られた跡があった。それも、相当な威力の拳だ。
「しかし、上からの命令です」
「……くそ、何を考えているのだ」
「お願いします、クレイグさん。従ってください」
「……分かった。すぐに戻る」
「ありがとうございます」
彼がそう言って引き揚げようとしたまさにその時。
街の一角で爆炎が上がった。
「今度は何だ?」
「クレイグさんダメです。引き上げを」
「馬鹿を言うな。国の民を守るのが我々の仕事だ。目の前でそれが侵されようとしているのに撤退などできるか!!」
引き留めるのも聞かず、クレイグはそこへ向けて走り出した。
後ろから彼を呼ぶ声は、もう耳に入らなかった。
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