燃え盛る街

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 現場に辿り着いたクレイグが見た光景は、まさに地獄絵図だった。  あちこちから火の手が上がり、建物は崩れ、通りには瓦礫や壊れた家具などが散乱していた。その間や、あるいは下敷きになって、黒焦げになった死体と思しき塊がいくつも転がっていた。肉の焼ける匂いや血の匂い、その他いろんなものが焦げた匂いが立ち込めていた。日頃訓練は怠っていないつもりだったが、それでも意の中身が全部戻ってきそうな匂いだった。  思わず立ち尽くしたのは一瞬だった。瓦礫や崩れた建物の間から、助けを求める声が聞こえたからだ。 「おい、しっかりしろ。今助ける」  そう言いながら、近くの瓦礫や建物の欠片を取り除いていく。  だが、出てくる物はかろうじて命を繋いでいるだけの、すっかり手遅れになった人間ばかり。  それらがクレイグを見つめ、助けを求めてきた。  子をかばったらしい母親は、この子だけでも、と自分の腹の下を指さした。  だが、そこにいるのは、すでに息絶えた子供だった。  尖った瓦礫に貫かれた男を助け出したら、その途端にせき止められていた大量の血が噴き出して絶命した。  それでも彼は必死で助け続けた。  報われぬ作業を延々と続けながら、通りを進んでいった。 「今助ける、今助ける」  そう呟き続けた。そんな彼の前に、新たなる肉の塊が落ちてきた。肉の塊には頭らしき部分がついていて、口のような物がパクパクしていた。目だけははっきりと分かった。何も言わず、ただクレイグを見つめて、その肉の塊は動かなくなった。 「うわぁぁぁぁ」  その瞬間、クレイグは叫び声をあげた。  肉の塊が飛ばされてきたと思われる方向には、黒い影があった。影はゆらゆらと揺らめきながら遠ざかっていくように見えた。 「逃がすものか!!」  立ち込める陽炎や熱気で朦朧としながらも、クレイグはその影の方へ駆けだした。 「おいっ!! 止まれ!!」  クレイグは影に向けて怒鳴った。
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