勇者の正体

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「何のつもりだカニング……」 「今更、お前が勇者と名乗るだけでも迷惑だというのに……」  陽光を受け、白刃が煌く。カニングはその柄を両手で握り、そのまま頭の上程まで上げて剣を構えた。「その名をバラ撒きながら街を破壊したとあれば、看過出来んのだ」 「なぜだ? お前達がこうしたんじゃないか。俺を無理矢理勇者に仕立て上げて。今一度、同じことをしてくれればいい。簡単な事だろう? そうすれば……そうすればエミリアもきっと……」 「貴様の下らん妄想に付き合う気はない」 「ふざけるな!! 何なら全てをぶちまけてやろうか? 本物の勇者が、あの足手まといの若造が今どこにいるか、いや、どこに埋められているか、と言った方が良いかな!?」 「ハァッ……!!」  気合一閃。一気に間合いを詰めたカニングの刃が、コーウェンの体を袈裟切りにせんとする。だが、コーウェンもまた、それを魔導士とは思えぬ身のこなしで躱し、同時にカニングめがけて魔法の光線を放っていた。カニングはそれを剣で弾き散らし、さらに間合いを詰めていく。  二人の戦いを離れたところで見ながら、デービスは溜息を吐いていた。  こうなれば、どちらかが死ぬまで戦いは終わらない。あの頃からそれほど仲の良くなかった二人だ。今は手加減抜きでお互いを殺しにかかっている。 「やれやれ、かつては共に旅した勇者の一行が……。悲しい事です」  ちっとも悲しくなさそうな顔でそう呟いたデービスは、広場の入り口辺りで呆然と二人の戦いを見ている若者の姿を認めた。 「おやおや。これはまた間の悪い……」  だが、その若者が衛兵団の印が付いた鎧を身に着けていることに気付き、デービスは戦いに巻き込まれぬようぐるりと広場を回って若者に近づいた。
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