デービスの話

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 広いリビングの中で、クレイグはいかにも所在が無かった。  衛兵団の詰め所よりも広いのに、屋敷のほんの一部屋だというのだ。  存在のレベルの違いを感じないわけにはいかなかった。 「まあまあ適当に座って下さい」 「いやしかし、自分は汚れて……」 「ああ良いんです。どうせ安物なんですから」  そう言ってデービスはけらけらと笑った。  安い、と言ってもクレイグの給料一ヶ月分ぐらいには相当するはずだった。それほど豪奢で立派な家具だったのだ。 「ほら座って」  勧められ、仕方なくクレイグはソファーの隅っこに尻をひっかけるような形で腰を下ろした。  もちろん寛げたものでは無い。 「何か飲みますか?」 「いえ、そんな。結構です。まだ仕事中ですし」 「貴君は固いなぁ。カニングが好きそうなタイプです。あ、ソッチ方面の話ではないですよ? 兵士として有能そうだという話です」  あはははと声をあげて笑うデービス。だが、クレイグはとても気楽に笑える気分ではなかった。 「さてまあ、どっから話しましょうかね……」 「あの男は……本当に勇者なのですか? かつて国を救ったという、伝説に出てくるあの勇者?」  そこがクレイグには気になって仕方なかった。  国を救い、平和を取り戻してくれた本人だとするならば、なぜあんなことをするのか。  気になって仕方なかったのだ。 「ああ……ふむ。結論だけ言うと違います」 「やはり違うのですか!! 国を護るという勇者があんなことするはずありませんよね」  クレイグは胸をなでおろした。  それを、少し苦笑いで眺めるデービス。  クレイグはさらに問いかけた。 「ではあいつは何者ですか?」  答えを期待するクレイグに対し、デービスはそれを値踏みするようにしばらく答えずに、ただ見つめた。そして、何かを決めた様に一つ息を吐くと、ゆっくりと喋り始めた。 「……ここからの話を聞くには覚悟が必要です。まず他言無用。貴君は我々と同じ秘密を抱える仲間とならねばなりません」  デービスは身を乗り出し、少しだけ声を落としてクレイグにそう言った。 「は……はい」 「よろしい。では、説明しましょう」  クレイグはひとつ大きく息を吸った。どんな事実が飛び出してきても、驚きはすまいと、背筋もただす。
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