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かなり怒っているのがありありと分かる反応だったが、見習いは負けじと怒鳴り返した。
「お前みたいな薄汚い奴に飲ませる水はねぇってんだ。とっとと出て行け、店が臭くなるだろ!!」
「この、クソガキが!!」
男はカウンター越しに手を伸ばし、見習いの首を鷲掴みにした。
「ぐぇっ……」
潰されたカエルのような音を出し、もがく見習い。だが、男の手は容赦なくその首に食い込む。
「お前みたいな若造に、何が分かる!!」
男はそう叫ぶと、見習いをカウンターの内側から易々と引きずり出し、そのまま店の壁めがけて投げ飛ばした。
「うわぁっ!!」
投げ飛ばされた見習いは、まるで人形のように一直線で壁まですっ飛んだ。そのまま凄まじい激突音と共に石壁にぶち当たり、そこに血の染みを残してズルズルと床へずり落ちた。彼の首はおかしな方向に曲がり、もうピクリとも動かなかった。絶命しているのは誰の目にも明らかだった。
「結局、水はいくらなんだ……」
見習いを投げ飛ばした男は、そちらには目も向けずカウンターの内側に入った。
「何だ、水はたらふくあるじゃないか」
カウンター裏にあった水がめの中を覗き込み、そばに会ったひしゃくで水を掬って一口飲んだ。
「ああ、旨い」
一息ついた彼の目に、壁にかかった携帯用の水袋が目に入った。
空っぽの水袋に、水がめの中の水をたっぷりと詰めた。
「代金は置いとくよ」
彼はもう誰も答えない店の中に向ってそう言い残し、店から出て行った。
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