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デービスの話
デービスが案内してくれた治療院の治療師は確かに腕が良かった。
腕の痛みが取れ、不自由だった動きも何となく回復したように感じた。
「何日か安静にしていれば、また以前と変わらない動きができるようになります」
治療師はそう言って、静かに笑った。
「あ、ありがとうございます」
彼は一礼して治療室を出た。
待合室で待っていたデービスは、包帯の撒かれたクレイグの姿を見てにっこりと笑った。
「良い治療師だったでしょう?」
「はい。とても……」
一時はもう腕が動かなくなるのではと思うほどだったが、今やそんな心配はみじんもなかった。
「では、私の屋敷に行きましょう。約束通り、お話ししますよ」
「えと、隊長の方は……」
「心配は無用です。どちらも簡単には死なないでしょうし、簡単に決着もつかないでしょう」
「では援軍を……」
「まさか。足手纏いが増えるだけです」
デービスの口調には大袈裟なところが少しも無かった。彼はただ事実を述べたという風だった。そして、あの凄惨な景色を見たクレイグには、それを否定することができなかった。
「行きましょう」
「……はい」
クレイグには頷く事しかできなかった。
それを見て、デービスは満足げに一つ笑った。
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